再エネ発電事業者がPPA契約を最適化するために必要な戦略とは

再エネ発電事業者がPPA契約を最適化するために必要な戦略とは

2024年7月12日

概要

日本では、再生可能エネルギー由来の電力への需要の高まりから、コーポレートPPA(再生可能エネルギーの電力調達契約)、の需要が拡大しています。この記事では、PPAの価格設定戦略における、予測分析やデータ収集などの重要なステップを探ります。

PPAの現状と市場トレンド

日本の電力市場において、PPA(Power Purchase Agreement)と呼ばれる再生可能エネルギー導入のサービス市場が注目されています。PPAは、企業や家庭などの電力需要家が発電事業者と再生可能エネルギーの発電電力を長期(通常10~25年)に直接購入する契約を結ぶ再エネ導入スキームです。FIT制度に代わるPPAの需要が拡大しており、2025年度には350億円、2030年度には700億円に成長すると予測されています。

図表1

PPAサービス市場の推移・予測

*出典:矢野経済研究所 ❘ PPAスキームによる再生可能エネルギー導入のサービス市場に関する調査を実施(2022年)*

予測分析に基づくPPA契約の価格設定戦略

PPAでは契約条件を自由に設定できますが、価格の最適化には工夫が必要です。PPA価格設定の最適化を追求するためには、以下のようなステップが考えられます。

1. データ収集:過去のPPA価格データや市場動向を収集する。

2. 予測モデリング:機械学習や時系列分析を用いて将来の価格動向を予測する。

3. 市場分析:市場環境や競合他社の戦略を評価する。

4. リスク評価:契約に関連するリスクを評価し、プライシングモデルに組み込む。

5. シナリオ・プランニング:異なる市場シナリオに対する影響を評価し、価格設定戦略を調整する。

6. ダイナミック・プライシング:リアルタイムの需要変動に応じて価格を調整するアプローチを採用する。

7. 継続的なモニタリングと最適化:定期的なモニタリングとフィードバックを通じて価格設定戦略を最適化する。

これらのステップを組み合わせることで、データに基づいた意思決定が可能であり、再生可能エネルギー市場での競争力を高めることができます。

最適化のための戦略的アプローチ

PPAの検討をする上でPPAの種類(オフサイト、自己託送、オンサイト、バーチャルPPAなど)、契約期間、需要家、価格設定の条件(固定価格、変動価格、価格保証や差金決済など)、FIPのプレミアムの受領者など、様々な検討項目があります。そこでPPA価格設定の戦略的対策を幾つかご紹介します。

バーチャルPPA

バーチャルPPA

例えば、契約形態の多様化です。様々な顧客のニーズや市況に対応するため、短期と長期のPPAを組み合わせて提供します。短期契約は需要の多い時期に高い価格を獲得でき、長期契約は収益の安定をもたらします。契約期間だけではなく、固定価格や上限・下限を定める価格設定を選択することで、発電コストの変動性を抑えつつ、リスクを下げることができます。また、付加価値サービスを提供することでPPA契約の魅力を高め、競合他社との差別化を図ることができます。具体的には、太陽光+蓄電ソリューションやエネルギー効率化への取り組みなどが挙げられます。太陽光と蓄電池を組み合わせることで、エネルギー供給の安定性を向上させ電力需要のピーク時に太陽光発電の電力を供給できます。加えてエネルギー効率化をPPAに組み込むことで、発電事業者はより少ない資源で同じ量の電力を生成できるため燃料や材料のコスト、発電コストを削減できます。このような付加価値をPPA価格に加えることで自社の販売価格を上げることができます。

Tensor Cloudの紹介

Tensor Cloudは、発電所の開発プロセスにおいて必要不可欠なツールです。Tensor Cloudでは様々なPPAの構造を扱うことができ、検証と比較を行うことが容易です。収益性に影響を及ぼすドライバーを特定し、理解を深めた上で、顧客との交渉に臨むことができます。

まとめ

PPA契約の価格設定戦略には、複数の戦略があります。契約形態の多様化や付加価値サービスの提供など、顧客ニーズに応え、競合他社との差別化を図りつつ、リスク配分を検討することが重要です。


著者
金 祥太
金 祥太
デジタルマーケティングインターン