パワーグリッド
2024年8月7日
皆さんはパワーグリッドという言葉を聞いたことがあるだろうか。もしくは、日本語で送配電網と聞いた時にパッとイメージがつくだろうか。この記事では電力の仕組みの基本である送配電網(パワーグリッド)の仕組みについて解説していく。
仕組み
「送配電網」はまず、「送電」と「配電」の二つのシステムに分かれている。どちらも簡単に言うと漢字の通り、送電は電力を送ること、配電は電力を配ることだ。電力を「送る」と「配る」にはどのような違いがあるのか、詳しく見ていこう。
まず、送電は発電所で作られた電力を変電所に送ることを指す。大規模な原子力発電所、火力、水力、風力、太陽光発電などさまざまな発電方法で作られる電力は高い電圧で長距離送電され、変電所で段階的に電圧を下げながら、街の変電所に送られる。そして、街の変電所から消費者向けの電圧になった電力が、私たちが日常で目にする電柱を通して、家庭や会社に届けられる。これを配電と呼ぶ。
変電所とは
送電、配電のどちらの工程でも重要な仲介点になる変電所とはどのような役割を果たしているのだろうか。変電所とは漢字の通り、電力を、電圧を、変える場所である。
まず、さまざまな発電所で作られた電力は変電所に集められる。大規模な発電設備は人里離れた場所にあることが多い。そのため、一度集められた大量の電力は、いくつもの鉄塔で上空に上げられたを太い電線を通して各地域の変電所に送られる。長距離の送電を効率的に行うためには高い電圧で送る必要があるが、危険も伴う。そのため、複数の変電所を経由して、市街地に近づくにつれ、段階的に電圧を下げて、家庭や会社で使用する消費者に配る仕組みになっている。
図表1
電力の市場
この送配電網、そして変電所の仕組みはまさに電力の市場と表裏一体と言えるだろう。発電所が電気を作り、そして変電所に電力を送る、送電と同時に電力を小売する会社に電力を「売る」。そして変電所を経由して私たち消費者は配電された電力を小売する会社から「買う」。目にみえる送配電網の裏側では電力の卸売市場が存在し、私たち消費者は小売電気事業者を通してその電力を買っているのである。
図表2
電力の原則とは
ではここで、電力の原則を見てみよう。電力の世界には「同時同量」という原則がある。これは発電所で電力が作られたら即送配電、即使用しなければならないと言うことだ。言い換えると電力は水のようには貯めることができない。例えば、今携帯電話を充電するために充電器を使用したとしよう。その流れてくる電力はたった数秒前に発電所で作られた電力が届いたのである。しかし私たちは電力を使う際に変電所に使用の許可や告知はしないがなぜこの電力はすぐに使えるのであろう。これは、電力会社が電力が使われる量を予測し電力を発電しているからである。しかし現在この状況に大きな変化が訪れている。
再生エネルギーの普及
それは再生可能エネルギーの普及である。太陽光や風力などの自然エネルギーを活用した発電方法は天気や時間帯によって発電できる量が変わってくるのである。特に太陽光に関しては太陽が出ている時間帯に発電をするため、発電のピーク時間帯はもちろん昼間である。しかし消費者の電力消費ピークは日没後の夜である。そこで必ずしも需要と供給が見合う状況を作るのが難しくなってきた。また、太陽光で電力が作りやすい地域では需要に対して発電量が大きく上回り、電力が余ると言う課題も出てきている。
他にも「同時同量」の原則の元起こり得る可能性として、電力の使いすぎや発電所の故障によって電力が作れなくなる状況下では貯められている電力がないため、使用できる電力がゼロになるという状況が起こる。これらは大規模停電の原因になり得るがそれを起こさないために送配電事業者が最大の努力をしている。しかしそのため、安定したエネルギー調達が確立されていない再生可能エネルギーの活用が後回しになっている。そして自然環境に左右されやすく発電量の確実な発電量予測ができない再生可能エネルギーの特性がこの同時同量の原則により欠点として現れている。そこで、現在では電力を貯めることを可能にしようと研究、開発が勧められている。
今後の発展
現在電力業界では科学を活用し、送配電システムに革命を起こそうと目まぐるしい変化が起きている。私たちTensor EnoagyではAIや機械学習などの先端技術を活用したアルゴリズムを開発し、クラウドプラットフォームとして提供し、電気系統の運営を円滑に、そして効率的に活用しするための技術開発に力を入れている。そして自然の力を利用した再生可能エネルギーの普及と開発に伴い、より地球の資源を無駄なく、そして環境に優しい電力システムが確立されることを期待する。
著者
林 光菜 スザンナ
マーケティングインターン